離陸 (Take-off)

離陸は、機体が加速を始めて規定の高度1500ft(460m)に達するまでをいいます。

離陸操作
離陸時には、乗客数、貨物重量、燃料等から離陸重量が算出され、これにより以下の各スピード(V1,VR,V2)が決定されます。 離陸を開始して加速すると、各スピード毎に手順が決められており、判断や操作が行われます。



  • 80Kt(ノット) or 100Kt(ノット)
  • 操縦を担当していないパイロット(PF)が速度計をモニターし、この速度になると「Eighty」or 「Hundred」とコールし左右の席に 設置された速度計が同じ値を表示しているかチェックします。ちなみに、速度は風圧(動圧)を測定しエアーデータコンピュータで 計算され、30Kt(56Km/h)から表示されるようになっています。

  • V1(離陸決心速度:take-off decision speed)
  • エンジンやその他の重大な故障が発生した場合、この速度に達する以前であれば離陸中止(RTO; Rejected Take-Off)しても 安全に停止できるが、以後に離陸中止しようとするとオーバーランする可能性が大きく、いったん離陸したほうが安全となります。 そのため、操縦を担当していないパイロット(PNF)が「V1」をコールすると、スロットルレバーから手をはなします。

  • VR(機種引き起こし速度:rotation speed)
  • この速度に達すると、操縦を担当していないパイロット(PNF)が「Rotation」とコールし、操縦を担当しているパイロット(PF)が操縦桿を 引き、機首を引き起こします。これは、機首を引き起こすことで翼の迎え角を大きくし揚力を増加させています。これにより、 自然に浮き上がりを待つより、主輪がより早く浮揚(リフトオフ)します。

  • V2(安全離陸速度:take-off safety speed)
  • V2は、浮揚(リフトオフ)し失速などせずに安全に上昇できる最小速度で、滑走路面より高度 35ft=10.7m ※1(離陸距離の末端)で 到達しなければならない速度です。V2に達すと、操縦を担当していないパイロット(PNF)が昇降計で上昇を確認すると「Positive Climb」 とコールし、操縦を担当しているパイロット(PF)が脚上げ(Gear Up)を指示します。

    ※1 - レジプロ・エンジン機では 50ft=15m

    パイロットは、近年ほとんどの機種で2名で運行されており、操縦を担当するパイロット:Pilot Flying (PF)と、 操縦を担当していないパイロット:Pilot Non-flying (PNF)で役割を分担しています。

    離陸時の推力
    航空機の運行中にエンジン推力が最大となるのが離陸時です。このときに最大離陸推力(Maximum Take Off Thrust)が決められており、 この範囲内でエンジンが使用されます。そして、この最大離陸推力の使用は通常5分以内と決められており、それ以上使用すると エンジンにダメージを受ける可能性がり、エンジン寿命を短くしてしまいます。

    離陸距離
    離陸に必要な距離は、以下の中で最も長い距離が採用されカタログ等に載せられています。

  • 離陸滑走を開始しV1まで加速し、V1で離陸を断念し機体が完全に停止する距離。
  • この場合、エンジンの逆噴射は使用せず、車輪ブレーキ、スポイラーのみ使用した距離となります。


  • 離陸滑走を開始しV1まで加速し、V1でエンジン1基が不作動になった場合の離陸開始地点から高度35ftに達するまでの距離。


  • 全エンジンが作動している場合の、離陸開始地点から高度35ftに達するまでの距離の115%に相当する距離。


  • 離陸方式
    離陸にはおもに以下にあげた方式があり、状況により使い分けられています。


  • スタンディングテイクオフ (Standing take-off)
  • 誘導路から滑走路に進入し、機体を滑走路方位に正対させ、いったん停止し、離陸推力をセットしブレーキを離し離陸する方式。

  • ローリングテイクオフ (Rolling take-off)
  • 誘導路から滑走路に進入した際に、いったん停止することなく機体を正対させ、離陸推力をセットしそのまま離陸する方式。

  • インターセクションテイクオフ (Intersection take-off)
  • 滑走路端からではなく、滑走路の途中の誘導路との交差地点などから滑走路に進入し、全長を使用しないで離陸する方式。